【連載】PixInsightを使った天体写真の画像処理 ① 前処理とは
この記事は前処理の概要となります。具体的な処理手順については、次の記事を参照ください。
目次
はじめに
この記事では、撮影した天体写真を仕上げるまでの過程について、備忘録を兼ねて説明いたします。
日中撮影する写真や、室内でライトを使って撮影する写真とは異なり、天体写真では非常に暗い被写体を撮影することになります。そのため、通常の写真とは異なり、カメラが記録する画像に一緒に記録されてしまう様々なノイズが問題となります。
しかし、天体写真というからには、天体からの光(シグナル)を表現したいですから、画像に含まれるノイズは邪魔です。そこで、天体写真では、通常の写真と異なる様々なプロセスを経て、鑑賞に堪える画像に仕上げていきます。
私が使用しているソフトは、PixInsightという Pleiades Astrophoto S.L. 製のソフトになります。
こちらのソフトは天体写真の画像処理に最適化されており、撮影した画像を処理できる、統合的なソフトとなっております。
一方で、このソフトは非常に自由度が高いことが特徴で、裏を返せば、「何をやっていいかわかりにくい」「なんかうまくいかないけど、何をどうすればいいかわからない」という意見が多いように感じます。私もその一人です。
そこでこの連載では、そんな「取っつき辛い」と評判のソフト、PixInsightを使って、天体写真の画像処理を行う手順を説明いたします。
最近は、私のお仲間を含め、当ソフトを利用して画像処理をされている方も多数おられます。インターネット上を探せば、偉大な先輩方が、さまざまなノウハウを公開されています。
例えば、下記の「蒼月城」さんによる動画は、PixInsightを使用した画像処理の方法について、その背景から解説された、日本語では唯一の解説となっております。まさにPixInsightのバイブルだと思います。
一般に、この手の処理は、様々な方法で勉強した知識を使って、自分なりにアレンジしていくものと考えます。
ベテランの方々は、様々な経験から、自分なりのノウハウを持っており、それを活かして、目を見張るような素晴らしい画像を仕上げているものと、想像しております。
上に掲載させていただいた動画をご覧いただければ、今から記載する内容はすべて網羅されるものと思います。
私もまだまだ初心者ではありますし、そんな自分の処理プロセスを公開することで、これから天体写真を始めてみよう、PixInsightを使用した画像処理を始めてみよう、という方の参考になればと考えております。
また、「こうした方がいいよ」「ここの処理はおかしいんじゃない?」という点がございましたら、ぜひコメント欄やTwitterにてご連絡いただけると、とても喜びます。
前処理とは
前置きが長くなりましたが、前処理の手順に触れる前に、天体写真の画像処理について、その流れをご紹介します。
天体写真の画像処理は、次のような手順で実施することが多いです。
前処理は、大きく分けて「キャリブレーション」「スタック」の2段階に分かれます。
「キャリブレーション」は、撮影画像から様々なノイズを取り除く操作を指します。通常の画像処理でも行われる(ソフトが自動的に行うことも多い)、「ノイズ処理」や「歪み補正」などを行いますが、天体写真の処理ではこれらをより高精度で行う必要があるため、「ノイズだけが写ったフレーム」「レンズや望遠鏡の光学特性を補正するフレーム」を撮影し、キャリブレーションを行います。
「スタック」は、キャリブレーションの終わった撮影画像を重ね合わせ(=Stack)、平均化することで、S/N比の向上を図る操作を指します。天体からの光は非常に暗く、観測にあたっては、光の粒子性が影響してきます。
通常の露光条件である、数十秒~数分の露光ですら、撮影した画像には、数個の光子に相当する天体からのシグナルしか映っておらず、ノイズと区別できないことがあります。
そこで、天体写真の撮影では、数十秒~数分の露光を繰り返し、平均化することで、複数の画像が捉えた微弱なシグナルをかき集め、S/N比を向上することができます。
上記のような操作を経ることで、クオリティの高い画像を得ることができます。
次回は、具体的な前処理の方法をご紹介いたします。
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