【画像処理】マスターキャリブレーションフレームの作成方法

以前の記事でキャリブレーションの方法を説明しましたが、キャリブレーションに必要なマスターキャリブレーションフレームの作成方法を説明しておりませんでした。本記事では、マスターキャリブレーションフレームの作成方法について記載します。

マスターバイアス・マスターダーク・マスターダークフラット

マスターダークはセンサに光が入射しない場合にも出力画像に含まれるノイズを差し引くために使います。(暗電流ノイズ、アンプグローなど・・・)
マスターバイアス(オフセット)は、画像のシグナルに必ず含まれるオフセット(信号が0やマイナスの値になるのを防ぐため、センサの出力信号に履かされる下駄)を差し引くものです。
なお、バイアスノイズについては、通常ダークを差し引くことで一緒に差し引かれるため、わざわざマスターバイアスを作成することはしていません。ただし、ダークフレーム撮影時のセンサ温度とライトフレーム撮影時のセンサ温度が違う際に行う、キャリブレーションフレームの”Optimize”オプションを使用する場合は、マスターバイアスが必要となります。(本記事では詳細は割愛します。) (以前の記事執筆時点では、DSLRを使用していたため、”Optimize”オプションを使用する都合でマスターバイアスを入力していますが、冷却カメラであれば不要と考えています。)

撮影方法

次の方法で撮影を行います。手順は三種類ともほぼ共通です。

バイアス

  • カメラにふたをし、センサに光が入り込まないようにする
  • ISO (ゲイン)・オフセット: ライトフレームと同条件
  • 露光時間: できるだけ短い時間 (e.g. 1/4000 s)
  • センサ温度: ライトフレームと同温度 (DSLRの場合は、できるだけ近い温度)
  • 撮影枚数: 1000枚程度を目安とする

ダーク

  • カメラにふたをし、センサに光が入り込まないようにする
  • ISO (ゲイン)・オフセット: ライトフレームと同条件
  • 露光時間: ライトフレームと同条件
  • センサ温度: ライトフレームと同温度 (DSLRの場合は、できるだけ近い温度)
  • 撮影枚数: 100枚程度を目安とする

ダークフラット

  • カメラにふたをし、センサに光が入り込まないようにする
  • ISO (ゲイン)・オフセット: フラットフレームと同条件 (=ライトフレームと同条件)
  • 露光時間: フラットフレームと同条件 (=ライトフレームと同条件)
  • センサ温度: フラットフレームと同温度 (DSLRの場合は、できるだけ近い温度)
  • 撮影枚数: 100枚程度を目安とする

スタック方法

PixInsightの”ImageIntegration”プロセスを使用します。設定は下記の通りです。

Fig. 1 バイアス・ダーク・ダークフラットフレームのスタック条件

変更する必要のあるパラメータは黄色ハイライト部となります。パラメータの内容は以下となります。

  • Combination: 複数のサブフレームをどのような方法で”Integrate” (日本語ではなぜかコンポジットと呼ばれますが、Compositeは「合成」の意味合いがあるため、不適切と思います。私は個人的に、「スタック」と呼んでいますし、integrateの直訳で「積分」という方もいらっしゃいます。)するか選びます。通常は”Average” (「加算」平均)になります。
  • Normalization: 撮影したフレーム間には若干の輝度ばらつきが発生します。(ライトやフラットでは光源の明るさの変化、空の状態の変化など)normalizationによって、輝度の差をそろえることができます。ダークではこのような輝度のばらつきが発生しないため、normalizationはオフにします。(No normalization)
  • Weights: combination時に、サブフレームに重みづけをすることができます。特に、輝度にばらつきの生じるライトやフラットのスタック時には、有用なオプションとなります。Normalizationと同様の理由で、このオプションは無効にしておきます。(選択しているパラメータの意味は、すべての重みづけを1にする = 重みづけをしない)
  • Scale estimator: normalizationのオプションによっては、画像のばらつきを評価する指標として、”scale”と呼ばれる値を使用することがあります。この”scale”の算出方法を選択します。通常は、”BWMV”で問題ないはずです。(詳細な説明は公式リファレンスを参照)
  • Rejection algorithm: 画像には、様々な原因で「異常ピクセル」が紛れ込むことがあります。ダークで問題になるのは、センサに放射線がヒットし、異常に高い輝度を吐きだすことです。このような異常ピクセルを除外するため、ピクセルごとにサブフレーム間のばらつきを計算し、異常なピクセルを判定します。そのためのアルゴリズムを選択するものです。通常は、”Winsorized Sigma Clipping”が良いかと思います。
  • Normalization ( @ rejection): rejectionの計算をする際のnormalizationのオンオフを選べます。上記同様、ダークでは不要です。

撮影したすべてのサブフレームを入力したら、”Apply global” (左下●ボタン)を押して実行し、出力結果を保存します。

Fig. 2 マスターダークフレームの例 (ASI294MM, -10℃, Gain 120, Offset 5, 100 × 120 s)

マスターフラット

マスターフラットは光学系の周辺減光やセンサ・光学系に付着したゴミの影を取り除くために使用します。

撮影方法

撮影方法については、過去記事に詳細をまとめておりますので、こちらをご覧ください。

スタック方法

はじめに、PixInsightの”ImageCalibration”プロセスを使用して、①で作成したマスターダークフラットの減算を行います。

Fig. 3 フラットフレームのキャリブレーション条件

“Master Dark”欄に①で作成したマスターダークフラットのパスを指定します。”Calibrate”, “Optimize”のチェックは外しておきます。”Apply global”で実行します。

キャリブレーションが終わったファイルは、元ファイルと同じディレクトリに保存されます。別のディレクトリを指定したい場合は、”Output Files” → “Output directory”に保存先を指定します。

  • Calibrate: キャリブレーション時に、マスターダークフラットからマスターバイアスを減算します。”Optimize”オプションを使用する場合はチェックを入れておきます。
  • Optimize: 非冷却のカメラを使用する場合は、オンにしておきます。ただし、出力結果に注意してください。キャリブレーション後の画像に、輝度値が”0″になっている点がある場合は、Optimizeに失敗している可能性があります。その場合は、”Optimization threshold”の値を変更すると改善することがあります。それでも改善しない場合は、”Optimize”オプションをオフにした方がよい結果となることがあります。

続いて、”ImageIntegration”プロセスでスタックします。①とパラメータが異なりますので、注意してください。(黄色ハイライト部)

Fig. 4 フラットフレームのスタック条件

変更するのは、”Normalization”の条件です。前述の通り、フラットフレームにはnormalizeが必要となりますので、”Multiplicative”(乗法的なnormalize)を選択します。Rejection 時のオプション”Equalize fluxes”も同様に、乗法的なnormalizeに対応するものです。設定が完了したら、”Apply global”で実行し、出力結果を保存しておきます。

Fig. 5 マスターフラットの例 (ASI294MM + R200SS, -10℃, Gain 120, Offset 5, 100 × 1 s)

ここまでの操作が完了したら、こちらの手順に従って、ライトフレームのキャリブレーションを実行します。

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