Sky-Watcher BKP130の改造

改造を行うとメーカ保証を受けられなくなります。破壊・故障の可能性もありますので、自己責任で行ってください。

BKP130という鏡筒があります。実売3万円程度と非常に安価なニュートン式望遠鏡ですが、適切な改造を行えば写真撮影も可能ということで人気があります。ただし、この「適切な改造」というのが大変です(私みたいに好きな人は好きだと思いますが・・・)。この改造については、こたろうさんがブログ記事をまとめてくださっています。私もこのブログを参考に改造を行ったのですが、今回はこたろうさんの改造と異なる点、追加で行った点をメインに記載します。

改造内容一覧

こたろうさんと同じ内容も含めると、私の行った改造の内容は以下のようになります。大がかりな改造から、軽微なものまで含みます。

  1. 主鏡セル・その他迷光防止目張り(パーマセルテープ)
  2. 主鏡マスク(爪隠し) (PVC製)
  3. 挿入型バッフル
  4. 斜鏡のコバ塗り
  5. 一体型スパイダー
  6. 斜鏡セル引きねじ交換
  7. 斜鏡セル押しねじ交換(クランピングスクリュー)
  8. ドローチューブ自作
  9. トップブリッジ
  10. 鏡筒のアルミシート巻き

この中で、私が工夫した要素について説明したいと思います。他の要素については、こたろうさんのブログで詳しく解説されています。

ドローチューブの作製

BKP130のドローチューブは、撮影用途としては次のような問題があります。

BKP130のドローチューブ (左) オリジナル (右)自作品
  1. ドローチューブが長すぎる(合焦位置で主鏡にドローチューブの影が落ちる)
  2. アイピース/カメラ取付部がねじ2点での固定となっている
  3. ドローチューブ外側にダイカスト表面の鋳肌がそのまま残っており、光を反射する
  4. クレイフォード接眼部のシャフトと摺動するフラット部の平面度が悪い

そこで、これらの問題点を解決するドローチューブを作製することにしました。下図がその形状となります。作製にあたっては、以下のポイントに留意しました。材料はA5056, つや消し黒アルマイト仕上げとしました。

  1. 合焦位置をあらかじめ把握したうえで、できるだけドローチューブの長さを短くする
  2. カメラをより強固に固定するため、3点留めにする
  3. 反射防止のため、表面処理をつや消し黒アルマイトにする
  4. フラット部の平面度を向上させる(切削加工で平面度を追い込む)
自作ドローチューブの形状

届いて実際に組み付けてみると、きちんと接眼部に組み込むことができました。アイピース/カメラ取付部とコマコレクタの間のガタも小さくなり、コマコレクタを挿入する際、少しでも傾いていると入らないほどです。シャフトを摺動させた後にフラット部を観察したところ、ほぼ全面に摺動痕が残っており、シャフトの片当たりも改善しているようです。

組み込んだ様子
フラット部の摺動痕: 全面が当たっているように見える

斜鏡のコバ塗り

BKP130の斜鏡は側面・裏面ともにガラスそのままで塗装がされておりません。側面には蒸着したアルミが一部付着したままになっていたりと、そのままでは迷光の原因になる可能性があり、塗装を行いました。
塗装に用いた塗料は、「イマジン ウォールペイント ザ ブラック ペイント」というものを使用しました。詳細なデータはありませんが、反射率1.66%となっており、十分低い反射率であること、水性のアクリル塗料で、壁紙用ということから塗膜の強度もある程度期待できそうなことから、購入したものです。

BKP130の斜鏡(塗装前)

実際に塗布してみると、確かに光の反射をほとんど感じません。このコバ塗りを実施してから、フラットが合いやすくなったように感じています。

BKP130の斜鏡(塗装後)

鏡筒表面へアルミシートを巻く

改造というほどのものでもありませんが・・・
Lambdaさんのブログを参考に、鏡筒表面へアルミシートを巻きました。幸いなことに私はあまり結露を経験したことがありませんが(斜鏡の結露を一度だけ経験、主鏡は経験なし)、温度変化によるピントの移動や筒内気流の低減につながればよいかなと思っています。

スパイダーの変更

BKPシリーズの欠点としてよく取り上げられるのが、「スパイダーが弱い」ことです。メーカのHPを見ると、極薄のスパイダーで見え味を向上させるようなことが書いてありますが、写真撮影の上では、斜鏡が動いたり、光軸調整中にスパイダーが曲がったりしてもらっては困るので、むしろこの点は欠点となってしまいます。

BKP130の斜鏡セルとスパイダー

そこで、R200SSの構造を参考に、一体型スパイダーのモデルを作製しました。この構造であれば、光軸調整中にスパイダーが曲がることも、撮影中にたわんで斜鏡が動くこともないでしょう。斜鏡セルの中心出しには、オリジナルと同様に引きねじの組み合わせによる方法を採用しました。

一体型スパイダーのモデル

加工して組み立ててみると、こちらもしっかりと鏡筒にはまりました。ついでに、光軸調整ねじをクランピングスクリューへ変更してあります。さらに、スパイダーには黒い不織布(入手困難なダイソーの「貼れる布」)を巻いております。不織布を巻く効果については、こちらの記事が詳しいです。

作製した一体型スパイダーを取り付けてみる

実写結果です。対象も総露光も違うため、結果はコンパラではありません。オリジナルではスパイダーが曲がっており画面左側の光条で先が割れてしまっていますが、変更後の光条は対称になっており、改善したのではないかと思います。

実写結果(左: オリジナル、右: 変更後)

番外編: クレイフォード接眼部の調整

BKPシリーズの接眼部はクレイフォード式と呼ばれる構造を採用しており、フォーカサーのシャフトとドローチューブの摩擦のみで保持する構造となっています。この摩擦が弱すぎると、ピント固定ねじを締めこんだ時にドローチューブが動いてピントがずれます。最悪の場合、ピント固定ねじを緩めただけでカメラが落ちてくる可能性すらあります。購入時からこの「ピント固定ねじを締めるとピントがずれる」という問題には長らく苦しみましたが、接眼部の調整で発生しなくなりました。

簡単に、接眼部の調整方法について記載します。BKP130の接眼部は下図のような構造をしています。シャフトをテフロンベアリングで押さえつけており、テフロンベアリングを押さえつける力を、2本の引きねじと中央の押しねじで調節しています。接眼体へは外側の4つのねじで固定されており、これらのねじにはOリングが取り付けられているので、分解する際にはなくなさないように注意します。また、テフロンベアリングとシャフトの間には潤滑剤は塗布されておらず、固体潤滑となっています。おそらく、クレイフォード式はシャフトとベアリングの間への異物に敏感なため、異物を巻き込む可能性のある潤滑剤が塗布されていないものと思われます。(ぐらすのすちさんにアドバイスをいただきました。)テフロンは固体潤滑でよく使用されるため、この構造も合点がいきます。というわけで、ここには潤滑剤を塗らず、ドライ状態で使用するのが望ましいと思います。

手順に戻ります。以下のような手順で、調整していきます。

  1. 固定ねじを取り外し、Oリングに気を付けながら接眼部を取り外す。
  2. ピント固定ねじ、バランス用ねじを取り外す。
  3. 2本の引きねじと押しねじを回しながら、テフロンベアリングのついた金具と、ベース金具をできるだけ平行にする。この時、高さはもとの状態からあまり変えない方がよいです。(後程接眼体に戻してから調整は可能です)
  4. 接眼体に再度取り付ける。この時、固定ねじは締めこむ前にすべて取り付け、対角順に少しずつ締めこんでいくことで、できるだけ接眼体と平行になるように気を付けます。
  5. 押しねじを締めこんで、ドローチューブがずり落ちてこなく、かつピント調節ノブを回したときにスムーズに摺動できる状態にする。
  6. 2本の引きねじを少しずつ均等に締めこむ。
  7. 押しねじを完全に締めこんでもドローチューブの固定が不十分な場合は、引きねじを左右均等な量少しだけ緩め、再度押しねじを締めこむ。
  8. バランス用ねじを取り付け、締めこむ。
  9. ピント固定ねじを取り付ける。(締めこまない)
  10. 固定ねじが緩んでいないかを確認し、すべてのねじに緩みがないかを確認する。
  11. ピント固定ねじが緩んだ状態で、ドローチューブが落ちてこないこと、ドローチューブがスムーズに摺動すること、ピント固定ねじを締めた際に、ドローチューブの位置がずれることなく、確実に固定できることを確認する。

この調整を行うことで、ASI294MCを取り付けてもドローチューブがずり落ちることはなくなり、ピント固定ねじを締めた際のピントずれも発生しなくなりました。

今後実施したい改造

ここまでの改造で、BKP130は写真鏡として十分活用していける程度に仕上がったんじゃないかと思います。現状残っている課題は、強いて言うなら、以下の2つとなります。

コマコレクターの変更

私はSky-Watcherの純正コマコレクター(F5)を使用しています。しかし、このコマコレクターは、画角や画角の周辺に明るい星が入り込むと、ゴーストを発生するという問題があります。コマコレクターのコーティングに起因するものと考えており、より良いコマコレクターに変えることも考えたいですが、あまり気にしないことにしています。

接眼部の変更

上にも述べた通り、クレイフォード式はラックピニオン式と比べて耐荷重に不安があり、モノクロカメラ+フィルターホイールでの運用には懸念が残ります。改造としては大掛かりになるため着手する予定はありませんが、可能であればラックピニオン式への換装を検討したいと考えています。

最後に

BKP130は実売3万円程度という価格にもかかわらず、主鏡や斜鏡の精度はとても良いため、このような改造で写真鏡として活躍させることが可能です。私自身も、この鏡筒を分解し、改造する過程で、ニュートン式望遠鏡の構造について理解を深めることができました。勉強用として、いじくりまわしてみるにも手軽な値段ですので、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。

最後に、BKP130の改造について、ノウハウを惜しげもなく公開してくださっている、こたろうさんにこの場を借りて感謝申し上げます。

“Sky-Watcher BKP130の改造” への4件の返信

  1. 初めまして、カムイミンダラと言います。
    ニュートン鏡筒の改造楽しく拝見させていただきました。
    私もGINJI250Dを持っていますが、斜鏡周りの脆弱さには頭が痛いですが、眼視専用なのでそのまま使っています。
    接眼部なのですが、安物のラックアンドピニオンよりも笠井トレーディングで出ているV-POWER2の方が断然強度があります。私も実際にこれに交換して使っていますが、1.2kgの2インチ双眼装置と2インチのアイピース2個を付けても全く問題ありません。

    1. カムイミンダラさん、コメントありがとうございます。
      以前雑誌に入選されていた、50分露出のエリダヌスバブルが強く記憶に残っています。
      V-POWER2良いのですね。私も気になって調べたことがあります。しばらく接眼部に手を出す予定はありませんが、もし気になったら見てみたいと思います。

  2. 青森の松林と申します。この投稿、じっくりと読ませていただきました。

    興味深いのは一体型スパイダーです。当方、タカハシMT-160を所有しています。旧型の細い丸型スパイダーなので、このような改造ができればいいなと思っていました。この一体型スパイダーは自作なのでしょうか。それともどこかへの外注なのでしょうか。是非ともこのようなスパイダーを作りたいと思っています。詳しい説明をいただければ幸いです。ご教示よろしくお願いします。

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