SVBONY SV405CC レビュー (1) 外観・動作テスト

はじめに: 冷却CMOSカメラについて

アマチュア天体写真の世界で撮影に用いられるカメラは、フィルムカメラ→冷却CCDカメラ→デジタル一眼レフカメラ→冷却CMOSカメラと変遷を遂げてきました。近年では、高量子効率を誇る裏面照射式CMOSが入手できるようになり、安価かつ高感度な冷却CMOSカメラが普及することで、アマチュア天体写真界は目覚ましい発展を遂げていると感じています。
アマチュア天体写真用冷却CMOSのメーカといえば、QHYCCDZWO ASIが二大巨頭となっています。冷却CCDカメラのメーカとして有名なFLIやSBIGなども冷却CMOSカメラを発売していますが、世界的に見ても、冷却CMOSカメラの市場はQHYCCDとZWOのほぼ寡占状態といえるでしょう。

そんな冷却CMOSカメラ市場に新たに参入したのがSVBONYというメーカです。同社は従前よりED屈折やフィールドスコープ、双眼鏡や小サイズイメージセンサを搭載した非冷却CMOSカメラと、天体観測関連の機器を幅広く製造・販売しております。私も同社の製品ではナローバンドフィルターを愛用しております。そんなメーカですが、今回新たに、IMX294イメージセンサを搭載したカラー冷却カメラである、SV405CCが発売されました。IMX294といえば、フォーサーズフォーマットの裏面照射型カラーCMOSセンサであり、QHY294CASI294MC Proといったカメラが良く知られています。その大きすぎず小さすぎないセンササイズやその高感度特性が人気を博しています。かくいう私もASI294MC ProやモノクロセンサのASI294MM Proを保有しており、このSV405CCでIMX294系のイメージセンサを搭載したカメラは3台目となります。

今回は、『SV405CC冷却カメラ先行体験ユーザー募集キャンペーン』により、13,000円のクーポンをいただき、¥85,521で購入することができました。フォーサーズフォーマットのセンサが載った冷却カメラを新品8万円台で購入できるというのは、これまでにはありませんでした。今回の記事では、SV405CCの製品紹介として、開封から動作テストの結果までを見てみたいと思います。

SPEC比較

まずは、IMX294 イメージセンサを搭載した冷却カメラの3機種を比較してみたいと思います。Table 1に仕様の比較を示します。イメージセンサが同じため、仕様も各社ほぼ似通っております。SV405CCはASI294MCを強く意識して作られているようにみえます。

項目ZWO ASI294MC ProQHYCCD QHY294C ProSVBONY SV405CC
SensorIMX294IMX294IMX294
Sensor diagonal [mm]23.223.223.2
Resolution4144×28224164×27964144×2822
Pixel size [um]4.634.634.63
ShutterRolling shutterRolling shutterRolling shutter
Exposure 32 us – 2000 s60 us – 3600 s50 us – 2000 s
Read noise[e-]1.2 – 7.31.2 – 6.9N/A
Full well [ke-]63.76563
ADC bit (bit)141414
Buffer size [MB]256256256
Protect windowAR windowAR windowAR window
Weight [g]410650N/A
Back focus [mm](※2)6.56.06.5
ΔT [℃]RT-35 RT-35RT-35
Reference price (USD)$999$999$799
Table 1 IMX294 イメージセンサを搭載した冷却カメラの仕様比較 (※1)

※1 仕様は各メーカの公式ページによる。
※2 バックフォーカスはカメラの取付面からイメージセンサ表面までとする。(アダプタの高さは含まない)

外観

早速届いたカメラの外観を見てみましょう。外箱はシンプルな形状です。

Fig. 1 外箱

内容物

箱に入っていた内容物は以下のようになっています。
面白いのは、AC 100 – 240 V→DC 12.0 V 5.0 Aの電源ケーブルが付属していることです。自宅や据え付けで使う際には便利かもしれません。ちなみに、カメラ本体の要求する電流もmax. 5.0 Aとなっており、ASI294MCのmax. 3.0 Aより大きくなっています。 ちなみに、DC 12 Vのケーブルは付属していないため、別途用意する必要があります。私はこちらのケーブルを使用しています。

付属品で良い点は、USB3.0 ケーブルです。きしめんタイプのケーブルではなく、太くてしっかりしています。硬さも柔らかく、取り回しも便利そうです。また、ケースの内側は柔らかい素材になっており、こちらも好印象です。
一方で不便なのは、キャップとM42メス延長アダプターの間に隙間があり、密閉できない点です。保管時には問題ありませんが、ダークの撮影時には迷光が入り込みそうで不安です。

  • カメラ本体
  • 専用ケース
  • マニュアル (6か国語対応)
  • USB3.0 ケーブル
  • T2-1.25インチ変換アダプター
  • M42オス – M42メス延長アダプター
  • M42オス – M48メス延長アダプター
  • M42メス – M48メス変換アダプター
  • M42メス延長アダプター (カメラに付属)
  • キャップ (カメラに付属)
  • 1.25インチ Tアダプター
  • スペーサ(樹脂製、4枚)
  • クリーニングクロス
  • ACアダプター
Fig. 2 内容物

重量

SV405CCの重量は488 g(実測値、M42メス延長アダプター、キャップを含む)でした。比較としてASI294MCの重量を測定したところ、475 gとなり、同程度といえます。

動作テスト

早速、PCに接続して動作テストを行いました。まずはドライバをインストールした状態でPCに接続すると、きちんと認識されました。(ドライバについては後程詳細を記載します)
撮影ソフト(今回はAstro Photography Tool, 以下APT)上では、”QHY CCD”という名前で認識されています。・・・深くは突っ込まないでおきます。

Fig. 3 ASCOMドライバの設定画面
Fig. 4 冷却時の温度グラフ

・・・と、ここで問題が発生しました。

カメラとAPTが接続した瞬間から、クーラーの出力が100%となり、イメージセンサの温度が急激に低下を始めました。あわててCooling Aidをオンにしたところ、設定値の0℃付近で安定した・・・と思ったのもつかの間、温度がハンチングを起こしました。クーラー出力のグラフを見ると、出力が0%から30%くらいの間を振動しており、温度制御に問題があるようです。温度の幅は設定値±1 ℃ほどの範囲を振動しているようなので、撮影結果に悪い影響がないかが気になるところです。
Cooling Aidと同様、Warming Aidも正しく動作せず、冷却状態からクーラーをオフするしかありませんでした。

2022/6/3追記: ASCOMドライバの不具合により、ASCOMドライバでの制御時にGain/Offset/冷却の条件変更ができない不具合が発生しているようです。詳しくはこちらのメーカ公式ブログをご覧ください。ASCOM経由で接続した場合は、Gain 12, Offset 不明, 冷却: 0゚C固定の条件となっているようです。昇降温の制御もできないため、急激にイメージセンサの温度が変化する条件で昇降温を行わざるを得なくなります。イメージセンサの寿命に影響する可能性もあるため、現時点ではネイティブドライバが使用可能なソフト、SharpCapやAstroDMX Captureを使用することをお勧めします。(SharpCapからの使用は問題ありませんでした。)

消費電力

次に、イメージセンサを冷却したときの消費電力を比較してみます。室温19℃程度の環境にて、0゚Cまで冷却した時の消費電力は、上記ハンチングの影響を受けているものの、平均的には3 W程度となっていました。ASI294MCを同様の条件で冷却した場合の消費電力は3 W程度となり、同等といえます。

各種ドライバの対応状況

次に、カメラを制御するうえで不可欠な各種ドライバの対応状況についてみてみます。

カメラドライバ(ネイティブドライバ)

SharpCapはネイティブドライバでSV405CCを制御することができます。メーカ公式ページからダウンロードしたV1.6.5を使用しています。正しく認識されています。

Fig. 5 SharpCapのカメラ選択画面

動作させてみましたが、クロップなしで3 fps程度のフレームレートは出るようです。

Fig. 6 動作時の様子

ASCOMドライバ

ASCOMドライバはメーカ公式ページからダウンロードしたV1.6.5を使用しています。設定画面はFig. 3 を参照ください。ちなみに、gainの設定値は0 – 270, offsetの設定値は0 – 255 となっていました。
これはAPTの問題かもしれませんが、ASCOM経由でカメラを制御すると、ASCOMドライバが設定したゲインとオフセットの設定をAPTが上書きできないようです。使用時はASCOMドライバでの設定を間違えないよう、注意が必要です。

2022/6/3追記: 上述の通り、V1.6.5のASCOMドライバには不具合があります。メーカにて修正対応中とのことです。

アンプグロー

公式サイトによると、このカメラはアンプグロー抑制機能を搭載しているようです。IMX294系のカメラは派手なアンプグローが出ることで知られていますが、このカメラは出ないのでしょうか。早速アンプグローの様子を見てみます。

Fig. 7 ダークフレーム SV405CC, Gain 120, Offset 5, Bin 1×1, 0 ℃, 10*120 s

アンプグローはASI294と同じようなアンプグローが出ています。ASI294ではダーク減算でアンプグローを完全に除去できるため、同じようにダーク減算で除去できることを期待します。

まとめ

今回はSV405CCの試用結果について書きました。到着初日の感想としては下記のとおりです。特に温度制御については重大な問題であり、カメラドライバの更新で改善できそうな気もしますので、早急に改善されることを期待します。

  • 見てくれは前評判通りASI294MCとほぼ同じ
  • まさかのACアダプタ付属
  • (現時点では)APTからGain/Offset/冷却の温度制御ができない
  • 温度制御のハンチングが重大な問題
  • アンプグローはあります

次回の予定

次回の記事では、次のような内容を中心に、イメージセンサの特性比較を行う予定です。期を見て実写テストにも進む予定です。

  • ダークノイズの大きさ
  • アンプグロー
  • 適切なオフセット値
  • コンバージョンファクタ
  • リードノイズ
  • フルウェル
  • ダークノイズの時系列解析

追記

再度PCへカメラを接続して冷却を開始したところ、先に述べたようなハンチングは発生しませんでした。冷却制御に関しては、もう少し様子見を続けたいと思います。

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