SVBONY SV705C レビュー 1)テスト撮影
SVBONY SV405CCのレビューについて、複数記事にまたがってレビューを書いてきました。そんなレビューを見てくれたのか、今回はSV705Cカメラのレビュー依頼をいただきました。このカメラは1/1.2型のカラーセンサであるIMX585を搭載している、非冷却タイプのカメラとなっています。イメージセンサのサイズとしては、以前購入したQHY5III174Mに搭載されているIMX174とほぼ同じ大きさですから、月・惑星の撮影をメインに、DSOの撮影にも使えるくらいのサイズを持っています。QHY5III174Mでは画像の水平方向に現れるバンディングノイズと再現性のないアンプグローに悩まされましたが、SV705Cはノンアンプグローを謳っているようです。これが正しければ、QHY5III174Mで不可能であった長時間露光によるDSO撮影ができるかもしれません。
目次
外観
早速外観から見てみます。冷却機能がない惑星用カメラに一般的な形状をしています。鏡筒への取付部はM42×0.75のおすねじが切ってあり、11 mmの延長筒でめすねじに変換できます。バックフォーカスは延長筒なしでカメラ取付面から6.5 mm、延長筒ありでカメラ取付面から17.5 mmとなっており、SV405CCと同様の設定となっています。底部にはUNC1/4のねじ穴が開いており、三脚に取り付けて使うことができそうです。
撮影テスト
次に、鏡筒を取り付けない状態でPCとの接続を確認します。カメラ側面のUSBポートからPCへ接続します。今回は撮影ソフトにN.I.N.A. ver. 2.1を使用し、カメラドライバはV1.9.8を使用しています。撮影ソフトから正しくカメラが認識されました。センサ温度は表示されないため、温度センサは内蔵されていないものと考えられます。非冷却カメラとはいえ、センサ温度は重要ですので、温度センサを内蔵してほしいところです。
次に撮影タブよりテスト撮影を行ってみると、正しく撮影を行うことができました。普段使っているIMX294系に比べて総画素数も小さいため、フレームレートも高速なようです。
ダークフレーム
ダークフレームを撮ってみます。ゲインはHCGモードがオンになる275, オフセットは15, 露光時間は137×15 sとしました。確かに、SV405CC(IMX294系)で見られるようなアンプグローは見られないものの、画面の右側に若干の熱かぶりが見られるようです。QHY5III174Mと比較するとその大きさは小さく、ライトフレーム撮影時にダークを取得すれば、正しくダーク減算ができるものと想像します。ダーク減算を含めたキャリブレーションの様子については実写テストの結果で確認してみます。
オフセット値の決定
ゲインを275に固定して、オフセットを0-25の間で5ずつ変化させてバイアスフレーム(露光3.2e-5 s)を取得し、輝度のmax, ave, min値を調べることで適切なオフセットを決定しました。バイアスフレームの輝度min値はオフセット15以上で0より大きくなるため、適切なオフセットの値は15となりました。
鏡筒への取り付け・撮影方法案
カメラを鏡筒へ取り付けてみます。光学系との組み合わせでいくつかの方法が考えられます。
① M42×0.75おすねじを使う方法・・・カメラに取り付いているM42延長筒を取り外すとバックフォーカスが6.5 mmとなるため、ZWOの電動フィルターホイールが使用可能です。鏡筒にフィルターホイールを取り付けてフィルターワークを行う場合はこの取り付けスタイルとなりそうです。
② M42延長筒のめすねじを使う方法・・・バックフォーカスが17.5 mmとなるため、ZWOのEFマウントアダプターを使用する場合はこの取り付けスタイルとなりそうです。EFマウントアダプターが取り付く鏡筒や、EFマウントのレンズに取り付けて使う場合など、汎用性のある取付方法となりそうです。
③ 31.7 mm変換チューブを使う方法・・・オフアキシスガイダーと併用する場合や、ガイド鏡に取り付けて使う場合はこの取り付けスタイルとなりそうです。鏡筒の31.7 mmスリーブに取り付けたり、オートガイド用に使用したりする場合に便利そうです。
④ CSマウント変換アダプタを使う方法・・・バックフォーカスが12.5 mmとなるため、CSマウントのレンズが取付可能です。カメラ底面のねじ穴と組み合わせて、CSマウントの広角レンズを取り付けて三脚に固定することで、全天カメラとして使えそうです。
実写結果
今回は、前項②と④の方法で撮影しました。
② M42延長筒でEFマウントアダプターに取付
②の方法でR200SSへ取り付けて撮影してみました。カメラは軽く、イメージセンサも小さいため、取り回しは大変楽です。撮影画像のプレビューを見ているときから、素直な画像が出ているようで期待が持てます。
普段はカラーカメラで撮影した画像をDebayerを使わない方法にて処理していますが、このカメラに関してはこの方法を取ると色がおかしくなってしまったため、Debayerを使いました。ベイヤー配列については、FITS Keyword通り、”GRBG”で間違いないようです。
ただし、スタック後の画像を見てみると、画像の全域で恒星の色ずれが発生しているようです。SV405CCで確認された色ずれにも似ているように見えます。一度RGB各チャンネルに分解して位置合わせ後、再度RGB合成したところ改善したようです。ただし後処理を進めていくと、残っていた色ずれが出てきてしまいました。SV405CCと同様、撮影された画像に後処理が行われているようにみえます。後処理を行わないように、カメラドライバを修正してほしいところです。
仕上げた結果です。今回は縦2パネルのモザイク合成としています。変なアンプグローやノイズなどはなく、素直で扱いやすい画像でした。非冷却カメラで撮影したことを考えれば十分な結果でしょう。特に、M42中心のトラぺジウム中心がぎりぎり飽和していないことは特筆に値すると思います。十分なフルウェルキャパシティを持っているようです。
Optics | Vixen R200SS |
Corrector | Corrector PH |
Filter | ZWO L 48 mm |
Focal length | 760 mm |
F stop | F3.8 |
Camera | SVBONY SV705C |
Gain | 275 |
Offset | 15 |
Binning | 1×1 |
Sensor temp. | N/A |
Exposure | Panel 1: 360×15 s Panel 2: 372×15 s (Total: 183 min) |
Date | 17-Nov. 2022 20:35- |
Mount | Sky-Watcher EQ6R |
Guiding | 130 mm guide scope, QHY5L-IIM, PHD2 |
Software | PixInsight, Photoshop CC |
④ CSマウントレンズを取付
続いて、2.5 mm F1.2のCSマウントレンズを取り付けてみます。このカメラと組み合わせると円周魚眼になります。きちんと全周けられなく見えていますが、解像が甘いようで、フォーカス位置を探すのに大変苦労しました。この画像もピントが合っているかわかりません。
タイムラプス映像です。
まとめ
今回は、SVBONYより提供いただいたSV705Cのテスト撮影を行いました。非冷却カメラであるにもかかわらず、出てきた画像は大変素直で扱いやすく、全天カメラや月・惑星の撮影、DSOまで対応できる拡張性とポテンシャルを持ったカメラであると感じました。惜しむらくは恒星の色ずれでしょう。SV405CCと似た色ずれが発生するため、これが改善すれば、大変良いカメラになると思います。
次回は、このカメラのリードノイズ・ゲイン・フルウェルの測定やダークノイズの解析を行ってみます。