SVBONY SV405CC レビュー (5) 暗電流

前回の記事に引き続き、SV405CCのレビュー第5弾となります。今回はダークノイズの特性として、暗電流の大きさと温度依存性について調べたいと思います。

測定方法

次の方法でダークフレームおよびバイアスフレームを取得し、暗電流 [e-/s]の値を算出しています。

  • 使用するカメラ: ASI294MC, SV405CC
  • 撮影条件: Table 1による
  • 各条件のダークフレームよりバイアスフレームを減算する。
  • 同温度で露光時間を変えたダークフレーム(以下露光セット)について、画像の中央300×300ピクセルにおける輝度の加算平均を計算する。
  • 計算値について、コンバージョンファクタの実測値を用いて光子数へ変換する。
  • 露光時間に対して、得られた光子数をプロットし、得られた直線の傾きを求める。
  • 傾きを各温度の露光セットについて求め、温度と傾きの関係をプロットする。
Table 1 撮影条件

また、今回はアレニウスプロットを用いて、熱によって電子が価電子帯から伝導帯へ励起されるのに必要な活性化エネルギー(=バンドギャップ)を求めてみたいと思います。
アレニウスの式は次の式で表されます。

$$
k = A\exp\left(-\frac{E_\mathrm{a}}{k_\mathrm{B}T}\right)~~~~~~(1)
$$

両辺の自然対数をとると、

$$
\mathrm{ln}~k = -\frac{E_\mathrm{a}}{k_\mathrm{B}T}+\mathrm{ln}~A~~~~~(2)
$$

となり、\(\frac{1}{T}\)に対して\(\mathrm{ln}~k\)をプロットしたときの傾きを\(m\)とすると、

$$
E_\mathrm{a} = -k_\mathrm{B}m~~~~~(3)
$$

として活性化エネルギーの値を得ることができます。

測定結果

露光時間とダークフレーム輝度の関係

露光時間とダークフレーム輝度の関係をFig. 1に示します。露光時間が長くなるにしたがって線形にダークフレームの輝度が上昇していることが分かります。また温度が下がるにつれてダークフレームの輝度も減少し、傾きも小さくなっていることから、暗電流の大きさが小さくなっていることを示唆しています。

Fig. 1 露光時間とダークフレーム輝度の関係 (カメラ: SV405CC)

センサー温度と暗電流の関係

次に、Fig. 1におけるプロットの傾きとして得られる、暗電流の大きさと温度の関係をFig. 2に示します。参考値として、ZWO公式サイトに記載のある暗電流の値をプロットしています。暗電流の大きさの大きさは温度の増加に伴って指数関数的に増加しています。また、ASI294MCのメーカー公称値、ASI294MCの実測値、SV405CCの実測値いずれもオーダーレベルでは一致しており、0℃では0.01 e-/s程度となっています。これより、例えば120 s露光の場合、暗電流の大きさは約1.2 e-となり、リードノイズの約2 e-と比較して同程度の大きさになります。一方25℃の場合は120 s露光で約30 e-となり、0℃のときと比較して約15倍の差となります。

Fig. 2 センサー温度と暗電流の関係

活性化エネルギー

活性化エネルギーの計算に使用したアレニウスプロットをFig. 3に示します。直線の傾きから計算した活性化エネルギーの値は、SV405CC: 0.89 eV, ASI294MC: 0.83 eVとなり、近しい値が得られました。Siのバンドギャップは298 Kにおいて1.11 eV 1)とありますので、それよりも若干小さい値となっています。PN接合のSi半導体の場合、活性化エネルギーが高温ではSiのバンドギャップに近くなる一方、低温では\(\frac{E_g}{2}\)に近づくことが知られており2)、不純物準位や欠陥からの遷移など、価電子帯から伝導体への励起以外のメカニズムによる遷移である可能性があります。

Fig. 3 作成したアレニウスプロット

まとめ

今回の記事では暗電流の大きさを見積もり、活性化エネルギーの値を推定しました。暗電流の大きさについては今まであまり意識してこなかったものの、その値はリードノイズと比較しても同程度から数倍のオーダーであることがわかりました。冷却カメラのメリットはこうした暗電流ノイズの量を減らせることが挙げられますが、ダーク減算を正しく行う上でもイメージセンサの温度を一定に保つことの意義は大きいと再認識しました。

参考文献

1) Atkins, Overton, Rourke, Weller, Armstrong (2008). Shriver and Atkins’ Inorganic Chemistry. Oxford University Press. (田中勝久・平尾一之・北川進(訳) (2008). シュライバー・アトキンス 無機化学(上) 東京化学同人)
2) ドンブアナム セミコンダクター インコーポレイテッド, 大韓民国 ソウル カンナムーク ダエチードン. CMOSイメージセンサ及びその製造方法. 特開 2006-19752. 2006-01-19.

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