CMOSカメラのゲイン(コンバージョンファクタ)の測定 ②
前回の記事に引き続き、今回の記事ではコンバージョンファクタの測定結果を載せていきます。の前に・・・
目次
ASI071MCをお借りした経緯
いつものようにZWOのホームページを徘徊していたところ、たまたまこんなカメラを見つけました。早速つぶやいたのですが・・・
まさかのMasaさんからこんなリプをいただき・・・
もともとはあぷらなーとさんにお貸しするような話になっていたのですが、(機材をレンタルした●羽さんに倣って)図々しくも貸していただけないか相談したところ・・・
おおお・・・なんとありがたい。
ということでやってきたわけです。
カメラが3台並んでいますが、このうちD7000はあぷらなーとさんよりお借りしたカメラ、そしてD5100は私の初めてのカメラ。実は、これら3台のカメラは全て同じIMX071というイメージセンサを搭載しています。そう、今回の解析を始めた真の目的は、これらの3つのカメラが積んでいるイメージセンサの挙動を比較することにあります。特に、デジタル一眼の場合は画像処理エンジンという名のブラックボックスが入っていますから、ASI071MCが出力する本来のイメージセンサが示す特性との比較が最大の興味となります。
解析結果
計算方法による差異
というわけで本題に戻って、解析結果を記載していきます。初めに、前回の記事で記載した方法①・②・③の結果を、バイアス減算まで入れた状態で再度比較してみます。
以下、撮影時のパラメータであるGain [unit 0.1 dB]をゲイン、Gain [e-/ADU]またはその逆数[ADU/e-]をコンバージョンファクタと呼称します。
Fig. 2は、各ゲインごとに露光時間を変えながら撮影した画像について、露光時間の平均値と分散をプロットしたものです。Fig. 2は方法③(プロットを2次式で近似したもの)になります。
続いて、近似曲線より求めたコンバージョンファクタを、ゲインに対してプロットした結果をFig. 3に示しました。Fig. 3より、ゲインの値が大きくなるにつれて、コンバージョンファクタ[ADU/e-]の値は大きくなっていきます。つまり、光子1個が入射したときに増加するデジタル値の増加量が大きくなります。これはゲインの定義通りです。そして、ゲインとコンバージョンファクタの関係は、片対数グラフ上で直線となっており、指数関数に従っていることもわかります。(これは、ゲインの定義が電圧の増幅率の対数表記であることからも明らかで、良好なリニアリティを示しているといえます。)
また、3種類の方法での比較では、結果に大きな差異は見られませんでした。ただし、方法①は係数や決定係数が、方法②や③と若干異なります。方法②と③では、ほぼ同等の値であり、計算方法としては大きな差はないものと推察します。この後の比較ではリードノイズも同時に比較したいため、今後の測定は方法③を用いることとします。
公称値との比較
次に、前回の記事で表示したメーカ公称値と、Fig.2 の測定結果を比較してみます。コンバージョンファクタはゲイン0で公称値が約3.0 e-/ADU, 今回の測定値が方法③で2.78 e-/ADUとなっており、比較的近い値を示しています。また、ユニティゲインの値は、公称値が90に対して、今回の測定値が方法③で88 となっており、こちらも近い値となっています。
機種による差異
続いて、ASI071MC/D7000/D5100の3機種について、コンバージョンファクタの測定結果をFig. 6に示しました。ゲインとISOでは定義が異なり、ISOについてはコンバージョンファクタ[ADU/e-]と比例関係になるとのことをあぷらなーとさんより伺っておりましたので、当初の予想通りの結果となりました。また、D7000とD5100では、各ISOにおけるコンバージョンファクタの値はほぼ同様になりました。このことから、両機種のゲイン設定はほぼ同様となっていると予想されます。
また、ユニティゲインに相当する、コンバージョンファクタが1 e-/ADUになるISOついては、D7000: 130, D5100: 108 となりました。このことから、「ユニティゲイン付近でISOを設定する」ことだけを考えれば、ISO200で使用するのが良い設定になります。
ここで、“Best ISO values for Nikon cameras”というサイトを見てみます。このサイトはDSLRで天体写真を撮影する際に、最適なISOの設定値はいくつになるかを、機種ごとにプロットしたものです。プロットはダイナミックレンジとISOの関係となっており、ゲインに関するものではないことが分かります。しかしながら、最適なISOは、D7000: 100 (謎の説明が書いてありますが・・・), D5100: 200となっており、ユニティゲインを基に推定した最適なISO値とほぼ一致します。この一致が偶然であるのか、必然的なものであるのかは調べきれていませんが、いったん次のような理解をしておきます。
アンプのゲインを同じ設定にして撮影する場合は、
ASI071MC: Gain 90
D5100, D7000: ISO200
で撮影するのが良さそう。
ということで、実際の天体の撮影では、上記Gain, ISOでの比較を試みたいと考えています。
次回予告
次の記事では、リードノイズの測定結果について触れます。また、ダークの時系列解析、実際の天体を撮影しての結果比較についても挑戦予定です。
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