リードノイズの測定

前回の記事に引き続き、イメージセンサの特性測定として、リードノイズの測定に挑戦してみます。

リードノイズとは

(CMOSイメージセンサを例として)イメージセンサの各画素に配置されたフォトダイオードで発生した電荷が素子内を移動するとき、また電荷を増幅するときにばらつきが生じます。これをリードノイズと呼んでいます。観測されたシグナルとリードノイズの関係をFig. 1に示します。(ここでは暗電流ノイズなどの他のノイズについてはいったん無視しています。)

Fig. 1 リードノイズの模式図

Fig. 1はライトフレーム (Measured signal)に対して、バイアスフレームを減算したときの画像 (Subtracted)がどう変化するかを表した模式図です。リードノイズは露光時間にかかわらず一定で、温度にもあまり左右されないという特徴を持ちます。そのため、バイアスフレーム、ライトフレームのどちらにも、同程度の量のリードノイズが含まれることとなります。そのため、バイアス減算によって、リードノイズの量は2倍となります。(正確にはバイアスの持つリードノイズの分散とライトフレームの持つリードノイズの分散の和)
このように、リードノイズはキャリブレーションで取り除くことができないため、できるだけ小さい値であることが求められます。はじめに、HCG (High Conversion Gain)モードを持つIMX492センサを搭載したASI294MMを使って、その挙動を観察してみたいと思います。続いて、リードノイズの観点から、IMX071を搭載した3種類のカメラ、ASI071MC, D7000, D5100 の三者を比較してみたいと思います。

評価

測定データの取得

2種類の方法を用いて評価を行いました。
① フラットフレームより推定する方法: 前回の記事と同様に、露光時間・ゲインを変えながら測定したフラットフレームの組を用いる方法。(カラーカメラについてはG1チャンネルのみを取り出して使用)
② バイアスフレームより推定する方法: ゲインを変えながら撮影したバイアスフレームの組を用いる方法。露光時間については、ASIカメラ: 2*0.032 ms, DSLR: 2*1/4000 s とした。(カラーカメラについても全チャンネルをそのまま使用)

評価

2種類の方法について、それぞれ下記の計算を行い、リードノイズ \(R_C\) [ADU, rms], \(R_e\) [e-, rms]を求めました。

① 得られたフラットフレームの平均輝度に対して分散をプロットし、(1)式の0次の係数より\(R_C\) [ADU]を求めた。得られた\(R_C\)にコンバージョンファクタ\(g\) [e-/ADU]を乗じ、\(R_e\) [e-]を求めた。

$$
N_C^2=R_C^2+\frac{1}{g}S_C+k^2S_C^2 ~~~~~~~~~~~~(1)
$$

② 得られた2枚のバイアスフレームの組(\(I_{b1}\), \(I_{b2}\)とする)に対して、(2)式により\(R_C\) [ADU]を求めた。後の手順は①と同様。
$$
R_C=\sqrt{\frac{1}{2n}\sum_{i=1}^{n}(I_i-\bar{I})^2}, I=I_{b1}-I_{b2}~~~~~~~~~~~~(2)
$$

結果

ASI294MM: HCGモードの挙動

はじめに、ASI294MMにてリードノイズを測定した結果をFig. 2に示します。ゲイン119からゲイン120に変化した時点で、リードノイズが急激に低下することが分かります。ゲイン120にて、増幅回路が切り替わり、HCGモードがオンになっている様子がはっきりとわかります。測定方法による違いでは、ADU単位で比較した場合、HCGの方は差が出ているようですが、光電子数換算した場合はほぼ同等のようです。公称値と比較しても、方法②の方が近いため、今後の測定では方法2を用いることとします。

Fig. 2 ASI294MMのリードノイズ

IMX071搭載 3機種の比較

次は、IMX071を搭載している3機種、ASI071MC / D7000 / D5100 のリードノイズを比較してみます。結果をFig. 3に示します。初めにASI071MCについては、こちらも方法②の方が公称値と近い結果になっています。一方、D7000/D5100は公称値が不明のため、こちらのサイトと比較してみます。あえて図は引用しませんが、ISOの増加に従って線形にリードノイズ[ADU]が増加するという傾向は一致していました。3機種の比較としては、光電子数換算のリードノイズ[e-]での比較が良さそうです。ASI071MCではゲイン250でも2 e-前後のリードノイズがありますが、D7000 / D5100では1 e-前後に抑えられています。イメージセンサ以外の内部回路の違いも要因として考えられますが、画像処理エンジンがリードノイズを減らすような何らかの処理をしている可能性があるのではないかと考えています。(未検証です)

Fig. 3 ASI071MC / D7000 / D5100 のリードノイズ

今回は4つのカメラについてリードノイズの測定を行ってみました。おおむね公称値と近しい値が出ていることから、測定自体はできているものと考えますが、DSLRの低いリードノイズの原因については不明です。今後は、ダークノイズの挙動について比較してみます。

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