SVBONY SV405CC レビュー (2) バイアスフレームの挙動
前回の記事に引き続き、SVBONY SV405CCのレビューです。今回は予告通り、SV405CCのゲイン(コンバージョンファクタ)測定と、ダークノイズの挙動について見ようと思ったのですが・・・ここで問題が発生しました。オフセットの最適値を決定するためにオフセットを変化させながらバイアスフレームを取得し、オフセットに対する輝度のmin値をプロットしたのですが、一向に0から上がっていきません。前回の記事でASCOMドライバの問題について触れましたが、今回の撮像はネイティブドライバにて行っており、fitsファイルのヘッダに書き込まれているオフセットの値は設定値通りに変化していることを確認しています。これは、ASI294MCでは見られなかった挙動です。このままでは、ダーク減算をする際に、輝度が0になっているピクセルから正の値を減算し、演算結果が負の値になる可能性があり、正しいダーク減算を行うことができません。そこでまずは、バイアスフレームの挙動を調査することにしました。
目次
画像を見てみる
まずはバイアスフレームをストレッチして異常がないか見てみます。
ここでいうバイアスフレームは、Gain 120, 30℃(センサ非冷却の状態), 0.17 msで露光し、オフセットの値は都度変化させて撮影したものを指します。ソフト上で設定できるオフセットの設定範囲は0 – 255, ASI294MCではオフセットを5で使用していることから、極端な比較として、オフセットの値を5と255にした場合の2通りについて比較しています。
一見するとバイアスフレームに異常はなく、輝度が0に張り付いているようには見えません。
バイアスフレームのヒストグラム
はじめに、ある1枚のバイアスフレームについて、全ピクセルの輝度を低い順に並べ替えて、輝度の低い方から300個のピクセルを抽出し、それらのピクセルのヒストグラムを作成しました(Fig. 5, Fig. 6)。輝度の値は、イメージセンサのADCビット数14 bitになるよう変換しています。通常の画像でよく見るヒストグラムの、輝度の低い領域を拡大したものだと思ってください。
Fig. 5およびFig. 6より、(少なくともこの2条件では)オフセットの値によらず輝度が0になるピクセル(以下、「輝度0ピクセル」と呼称します)があることがわかります。そしてその個数はオフセットの値によらず20個前後であることもわかります。
このような輝度0ピクセルが存在する理由について考えてみたところ、すぐ思いつくのは2つの可能性でした。
- 表示上のオフセットが変化しても実際のオフセットは変化しておらず、不十分なオフセット値となっている。
- イメージセンサの四隅どこかに輝度が0になる領域を意図的に持たせている。
- 欠損したピクセルがあり、特定のピクセルが常に輝度0を吐き出している。
仮に1.が正しいとすれば、イメージセンサにおける輝度0ピクセルの位置は、各フレームごとにランダムに変化するはずです。一方、2. または3. が正しいとすれば、イメージセンサにおける輝度0ピクセルの位置は、各フレームごとに変化せず、常に特定のピクセルが輝度0ピクセルとなるはずです。
以上の仮説から、バイアスフレームを複数(今回は5枚)用意し、輝度イメージセンサにおける輝度0ピクセルの座標を調べ、プロットしてみることにしました。
輝度0ピクセルの位置依存性
Fig. 7, Fig. 8 にすべての輝度0ピクセルの座標を、各画像ごとに色分けしてプロットしています。図より明らかに、輝度0ピクセルの座標は各画像でランダムであることがわかります。そのため、上記仮説の1. の可能性が高いものと推察されます。現在SVBONYへ問い合わせ中のため、回答を受領次第今後の進め方を考えたいと思います。
思わぬところで壁にぶつかってしまいましたが、これも初物の難しさであり楽しさだと感じました。問題が解決すれば、予告通りのオフセット値の決定やコンバージョンファクタ、リードノイズ、フルウェルの測定に進みたいと思います。
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